診療科目

活性化自己リンパ球療法

活性化自己リンパ球療法とは

活性化自己リンパ球療法は、がん患者様ご自身の血液(約30ml)からがん細胞と戦う役割を持つリンパ球を取り出し、活性化させながら増殖させ、免疫力を増強し、そのリンパ球を点滴にて患者様の体内に戻すがん免疫細胞療法と呼ばれるがん治療およびがん予防の治療です。

治療に用いる活性化したリンパ球は、ほとんどが活性化Tリンパ球です。(約2週間の培養によって、100~1,000倍に活性化増殖させたものです。)

(Tリンパ球は、がん細胞やウィルスに感染した細胞などの異常細胞を排除する役割を担います。)

活性化自己リンパ球療法によるがん治療目的

・がんの予防 再発予防

・がんの進行・転移抑制

・QOLの改善

に効果が期待でき、患者様ご自身のリンパ球を使用するため、副作用が極めて少なく、ほぼ全てのがんに適応できます。

標準治療である外科手術、放射線療法、化学療法以外に新しいがん治療法「免疫療法」の1つとして、当院の活性化自己リンパ球療法が注目されています。

手術後の再発予防、進行がん、再発がんの治療のために、従来の治療と併用して効果を期待するほか、患者様の生活の質(QOL)向上に役立てることを目的としています。

また、活性化自己リンパ球療法は免疫力を高める治療のため、がん治療だけでなく、がん予防治療、ウイルス感染症治療、アンチエイジングといった分野への応用も期待されています。

活性化自己リンパ球療法の特徴

・多くのがん種に適応(血液がんを除く)
・がんの再発予防、QOLの維持・改善に効果が期待できる
・副作用がほとんどない、副作用の軽減効果が期待できる  
・他の治療(放射線、抗がん剤)との併用が可能、相乗効果 
・負担が少ない治療  少量(30CC)の採血と点滴(約一時間程度)のみ  
 1回の血液から、数回投与分かつ大量のリンパ球を調整可能
・治療の元となるリンパ球の凍結保存が可能 
 ライフスタイル、治療スケジュールに合わせた治療が可能
・通院治療が可能

当クリニックの活性化自己リンパ球療法

・活性化自己リンパ球の大量培養法を世界に先駆けて開発
 (国立がんセンターにて開発)

がん免疫細胞療法は、1980年代初期、アメリカ国立がん研究所(NCI)のDr.ローゼンバーグらが開発したLAK療法に始まります。 このLAK療法は、NK細胞と呼ばれるリンパ球をIL-2(細胞活性物質)で刺激したものを投与する治療法でした。

NK細胞は、その性質上、増殖に限界があるため、治療には大量の血液を必要としました。また、細胞障害活性を維持するためには、大量のIL-2をNK細胞と同時に体内に投与するため、重篤な副作用が現れました。これらの理由から、現在ではほとんど行われない治療法となりました。

 

1980年代の後半、国立がんセンターがLAK療法の弱点を克服する活性化自己リンパ球の大量培養法を開発しました。

 活性化自己リンパ球の大量培養法は、腫瘍免疫の主役であるT細胞を抗CD3抗体やIL-2で活性化させながら約1000倍と大量に増殖させることができるため、少量の血液から調整することができます。また、投与時には活性化・増幅に用いた活性化物質を取り除いても行えるため、重い副作用をなくすことができました。

 

上記の大量培養法の開発以降、一般的な治療として普及および活用できるように技術改良を重ね、品質管理方法や、培養方法の画一化を重ね、臨床応用できる療法として活性化自己リンパ球療法を確立しました。

その後、肝臓がん手術後の再発予防効果について臨床試験を行い、その効果を証明しました。

 

・がんセンター時代からの臨床研究(がんの再発予防)が英国医学誌ランセットに掲載
 (免疫細胞療法単独で効果を証明した唯一の科学的根拠)

活性化自己リンパ球療法のがん治療における効果検証として、「肝臓がんの手術後の再発予防効果」を確認する臨床研究が実施されています。

 肝臓がんは、外科的手術によって、目に見えるがんが全て取り除けたとしても、術後3年で70%再発する再発率の高いがんであると知られています。この再発率の低下を目的として、臨床研究は実施されました。

  本研究はエビデンスの信頼度が最も高いといわれる無作為化比較試験で検証され、その結果、英国医学雑誌「Lancet」に掲載され、エビデンスのある治療法として世界の医学会で認められています。

 

無作為化比較試験

手術により完全にがん組織を摘出できた肝臓がんの患者様150人を、活性化自己リンパ球を投与したグループ「活性化自己リンパ球投与群」76人、投与は行わず標準治療のみのグループ「非投与群」74人に、無作為に分けて経過観察しました。

 

その結果、観察開始から4.4年の時点で
「活性化自己リンパ球投与群」の再発率が59%であるのに対して
「非投与群」の再発率は77%でした。

 

これを逆に無再発率でみると、
「活性化自己リンパ旧投与群」の無再発率は41%
「非投与群」の無再発率は23%になります。

 

つまり、肝臓がんの無再発率を、23%から41%へ、
18ポイントも引き上げたのです。

 

また、再発までの期間は、「非投与群」で平均1.6年でしたが、
「活性化自己リンパ球投与群」は平均2.8年と、
統計上1.2年も再発を遅らせたのです。

・心と体に優しい活性化自己リンパ球療法

活性化自己リンパ球療法は、抗がん剤のような辛い副作用はありません。

主症状は37℃程度の発熱であり、当日中に自然解熱することがほとんどです。

患者様ご自身の細胞を使用しますので、拒絶反応等の重篤な副作用はなく、抗がん剤や放射線の副作用の軽減も期待できることから、心と体にやさしい治療法です。

活性化自己リンパ球療法の有効性を証明する臨床研究の結果では、活性化自己リンパ球療法を実施した76名(370投与)のうち、発熱は50投与(13.5%)に見られました。

副作用の症状

370投与中副作用が認められた数と割合

発熱

50投与

13.5%

頭痛

5投与

1.4%

吐き気

4投与

1.1%

めまい

1投与

0.3%

かゆみ

1投与

0.3%

頻脈

1投与

0.3%

合計

62投与

16.7%

LANCET,356,802-807(2000)

当クリニックの活性化自己リンパ球の品質

・特定細胞加工物の製造許可施設

 細胞加工センターでの細胞加工

当クリニックでは、免疫細胞療法の開発者である関根博士が立ち上げ、その技術を継承する細胞培養施設と提携し、高品質の活性化自己リンパ球療法を行っています。

細胞培養施設の細胞加工センターは、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」 (平成25年法律第85号)で定められている特定細胞加工の製造許可を取得し(許可施設番号FA315003)、臨床で使用するにふさわしい高品質の活性化自己リンパ球の加工を行っております。

・高品質な製品 品質管理、製造管理システム、ISO9001

患者様の治療にかかわる活性化リンパ球を培養する私たちにとって確かな品質の活性化リンパ球を提供することは重要な責務です。「安全で信頼ある高品質な活性化リンパ球を治療に用いる」このためには品質や精度に対する厳格な管理・運用はもとよりそれを支える技術能力も相応のレベルが求められます。これらを実行・継続するため国際規格ISO9001を取得し、規格に沿った運営・管理を行っております。

 

ISO9001は品質管理、品質保証(安定した品質の製品やサービスを供給)に留まらず、お客様の満足や改善を含む組織の管理までにも踏み込んだ国際標準モデルとしてISO(国際標準化機構)によって制定された規格です。

 

・安心で高品質な活性化自己リンパ球

細胞を加工する細胞培養施設の細胞加工センターでは、下記の試験をお一人毎、全検体に対して行い、安心で高品質であることを確認しています。

無菌試験

菌の発育しやすい環境に培養液の一部をいれ、菌が増えないこと(無菌であること)を確認します。

エンドトキシン試験

菌種によっては表面にエンドトキシンという物質があります。血中に入るとショック症状(発熱)を引き起こす場合があります。安全な数値以下(基準値以下の数値)であることを確認します。

FACS測定

細胞表面には細胞種によって特徴のある目印が出ています。リンパ球の目印、活性化の目印を測定することで、活性化リンパ球の特徴を持つ細胞がどのくらいいるか確認します。.

細胞数測定

製品に含まれる細胞数の計測を行い、基準以上の細胞数がいることを確認します。

VNTR試験

個々人の染色体には他人とは違った目印があります。リンパ球の取り違い防止のために、この目印を確認します。

マイコプラズマ、ウイルス否定試験
核酸増幅法により、原料、製剤への混入の有無を確認します

活性化自己リンパ球療法を検討している方へ

・これから手術などの治療を控えている患者様へ

がんの治療法は、

①手術、②化学療法、③放射線療法、④免疫療法が一般的に挙げられます。

活性化自己リンパ療法(免疫療法)は第4の療法と言われていますが「4番目に選択する療法」ではありません。

 免疫療法は、がんになったときに考えるものです。

(※効果的な治療がない、もしくは受けられない場合に考える治療法ではありません)

がん治療も様々あり、多くの方が標準治療を選択します。がんと分かったとき標準治療を選択する際に免疫療法も考慮することが重要です。

手術を予定されている方は、手術を受ける前にご相談ください。

 予め採血を行い、手術後、早い段階で活性化自己リンパ球療法を始めることが極めて有効です。また、標準治療との併用で、更に効果が期待できます。(②化学療法、③放射線療法との併用により、さらに効果が期待できます。)

 

・既に手術などの治療を受けられた患者様へ

手術を受けられた患者様も、術後の治療法として検討していただきたい療法です。

・早期がん(I期~II期)の場合

がんの再発及び転移のリスクの低減、重複がんの予防が期待できます。

⇒ 手術 + 活性化自己リンパ球療法 = 再発予防

 

・進行がん(III期~IV期)の場合

がんの進行を遅らせること、QOL(生活の質)の維持・改善が期待できます。

⇒ 手術 + 化学療法(抗がん剤) + 活性化自己リンパ球療法

⇒ 手術 + 放射線療法 + 活性化自己リンパ球療法 = QOLの維持・改善

受診案内

・投与頻度、投与回数などは、診察の上、患者様と相談後決定致します。

・相談時には、相談時までのデータ(血液、画像などの検査データ)を可能な限りご持参ください。

ご持参できない場合、または医師が必要と判断した場合は、治療のために必要な血液検査を実費にて実施させていただくことがあります。